生地の向こう側
生地を薄く伸ばし、光にかざす。透けて見える向こう側は、いつもと同じだったり、たまに違ったり。
2026.9.17

生地をこねる時、今日はどんなものかと少し身構えます。
水分量や配合によって、こねやすさが変わるからです。
だんだん慣れてくると、ファーストタッチでなんとなく分かるようになってきました。
「あ、今日は時間がかかりそう」「今日は楽勝だな」というように。
それでも、こねながら「本当にパンになるんだろうか」と不安になることは今でもあります。
途中で「思ってたのとちがーう」となることもたまにあります。
べたつきが、ある瞬間から消える
こね始めは、生地が台にも手にもまとわりついてきます。力を入れれば入れるほど、余計にくっつく気がします。
特にべたつきの強い生地のときは、まず焦らず、手をぐるぐると回しながらこねます。台や手にくっつくのは、気にしなくて大丈夫です。手についた生地は、スケッパーでこまめに落としながら、根気強く続けます。

すると、ある瞬間から急に変わります。手にも台にもつかなくなり、生地がひとまとまりになります。この瞬間は、安堵感と喜びが同時にやってくる、パン作りの醍醐味のひとつです。何度作っても、この瞬間が訪れると嬉しくなります。
時計を見なくなった
以前は、「〇分ぐらいこねる」という目安を頼りに、時計をちらちらと気にしていました。思ったより時間がかかっているときは、「こんなにこねているのに」と焦ることもありました。
今は、あまり時計を見ません。見ているのは、生地そのものです。粗かった表面が、少しずつなめらかになっていきます。手のひらに伝わる感触も、だんだん気持ちのいい触り心地に変わっていきます。
時間を気にするのをやめたら、こねる時間そのものが少し楽になりました。急いでいたはずなのに、いつの間にか急がなくなっている自分がいます。

生地の向こう側を見る
仕上げに、生地の一部を持ち上げ、左右に振りながら生地自身の重みで伸ばします。破れずに、うっすらと向こうが透けて見えたら、こね上がりのサイン。破れてしまったら、あと少しだけこねます。
こねる数分間は、正解を急がなくても大丈夫です。生地は、ちゃんと教えてくれます。
透けた生地の向こう側はいつもと同じだったり、たまに違ったり。
去年より少し高い位置に、子どもの手が届くようになっていたり。
使い込んだ調理器具が、新しいものに替わっていたり。
その違いに気づけるのも、こねる時間があるからこそ
生地の向こうの景色も、少しずつ変わっていくことを楽しみたいと思います。

今回紹介するのはこねがいのある超リッチな生地「ブリオッシュナンテール」
ぜひ生地の向こう側を確認してみてください。


